研究概要 |
工業の発展に伴い深刻な環境汚染が人々の関心を集めており、近年では窒素酸化物による地球環境の破壊が大きな問題となっている。窒素酸化物の生態系における除去は脱窒菌などの微生物による。これらの菌は廃水処理で再利用されているが、元来生態系に広く分布しておらずまた増殖が良くないものも多いので、必ずしも窒素酸化物の除去が効率的に行われているわけではない。そこで本研究では、遺伝子工学を応用して生物的窒素酸化物処理を飛躍的に効率化することを目的とし、これら脱窒に関する遺伝子をクローン化しその構造を決定した。まず既にクローン化してある亜硝酸還元酵素遺伝子を中心に上流11kb及び下流17kb程度の遺伝子をλファージベクターを用いてクローン化した。現在この遺伝子領域15kb程度の塩基配列を決定中であるが、亜硝酸還元酵素遺伝子の上流領域には脱窒菌Pseudomonas aeruginosaの酸化窒素還元酵素とアミノ酸レベルで60%の相同性を有する部位が発見された。相同性から考えてこの領域は酸化窒素還元酵素遺伝子NorBに相当すると考えられている。この遺伝子は、亜硝酸還元酵素遺伝子NirSの逆向きに存在しており、NirSとNorBの位置関係はP.aeruginosaと酷似していた。 一方、NirSの下流側約7kbのDNA塩基配列を決定したところ、やはり電伝達に関与するNirE,C,Fと補酵素ピロールキノリンキノン合成酵素に相同性を有する部位が見出された。このピロールキノリキノン合成酵素と相同な遺伝子の役割りについては不明である。 現在、脱窒に関する酵素遺伝子すべてをクローン化することを目的とて亜酸化窒素還元酵素遺伝子を検索中である。
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