研究概要 |
アブラナ科自家不和合性は胞子体的に働く1座位のS複対立遺伝子によって説明される。S遺伝子の間では共優性に発現するものが多いが、優性・劣性の関係もある。本研究では、このS遺伝子間の共優性、優劣性の関係の実体を明らかにし、さらに、自家不和合性関連遺伝子を単離して、その優性・劣性の発現機構を分析することを目的としている。 まず、日本とトルコのBrassica campestris集団から単離した25のS遺伝子ホモ系統を用いて、S遺伝子間の優劣性について検討した。柱頭側でSヘテロ接合の場合共優性グループと優性グループの2つのグループに分けられるが、花粉側でヘテロ接合の時には共優性グループ、優性グループ、劣性グループの3グループに分かれた。花粉で見られる優劣性と柱頭の優劣性とは関係がなかった。さらに、本研究では、14のS遺伝子組み合わせにおいて、共劣性現象ともいうべき現象が見られた。すなわち、S遺伝子がヘテロ接合となった場合、自家不和合性を示すが、いずれの親とも和合となる現象である。この様な現象は花粉側にのみ見いだされた。 以上の優劣性をもとに、いくつかのS遺伝子系統に由来するcDNAライブラリーまたはゲノミックライブラリーから自家不和合性関連遺伝子SLG, SRKの単離・解析を行った。S9系統のSLGとSRKのSドメインとプロモーター領域は、約1.7kbにわたって完全な一致が見られ、この高い相同性が柱頭側の優劣性に関与していると考えられた。また、花粉側で劣性のS29系統からSLGおよびSRBを単離した。これらの間には相互に高い相同性が見られた。
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