研究概要 |
1.アイソザイム遺伝子座の探索:平成6年度に引き続きコナラ亜属1種(ウバメガシ)、アカガシ亜属3種(アカガシ・アラカシ・シラカシ)の冬芽を用いて、27酵素種のアイソザイム分析を行った。16酵素種(ADH,ShDH,6PGD,G6PD,POD,GR,DIA,MNR,GOT,GK,PGM,AMY,LAP,AAP,ACO,PGI)においていずれかの樹種で鮮明な泳動像が得られ、合計18遺伝子座が推定できた。 遺伝的多様性評価:天然分布域のウバメガシ5集団、アカガシ6集団、アラカシ6集団およびシラカシ2集団(分析個体約30個体/集団)を対象として、それぞれ9、11、8、7遺伝子座を用いて各樹種の遺伝的変異の大きさ、種内における集団間分化程度を評価した。また樹種間の遺伝的関係は遺伝子の相同性推定が可能であった5遺伝子座で解析した。その結果、種内変異量を表す平均ヘテロ接合度(期待値)ではウバメガシが0.408、アラカシが0.321、アカガシが0.146、シラカシが0.171となり、ウバメガシとアラカシがアカガシとシラカシに比べて約2倍も変異が大きかった。また種内の遺伝的分化は、ウバメガシで全変異の10.5%が集団間変異であり、最も分化が進んでいることがわかった。また集団間の遺伝的距離はその地理的距離を反映していた。一方他の3樹種は、全変異の97%以上が集団内変異であり、遺伝的分化が非常に低いことがわかった。樹種間の遺伝的関係は、4樹種の全変異のうち23.4%が亜属間の変異であり、コナラ亜属のウバメガシがアカガシ亜属の3種から遺伝的に遠く離れていることがわかった。またアカガシ亜属3種の中では、アラカシとシラカシが近縁でアカガシから比較的離れていることがわかった。このアカガシ亜属3種の全変異のうち36.9%が種間の変異であり、種内集団間の変異はわずか1%弱であった。以上の研究成果からこれら樹種の遺伝子資源保存の方策を検討した。
|