研究課題/領域番号 |
05454041
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
佐野 芳雄 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助教授 (70109528)
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研究分担者 |
平野 博之 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助手 (00192716)
森島 啓子 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (70000247)
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キーワード | 野性イネ / 野性遺伝子 / 実験系統 / 遺伝的評価 / 遺伝資源 / 遺伝組換え / 有用遺伝子 |
研究概要 |
新しい育種技術の進展に伴って、貴重な遺伝子源である野性植物の遺伝的再評価が益々重要になってきた。ゲノム解析がおびただしい情報をもたらす中で、イネ遺伝学を再構築する努力は様々なレベルで考慮されることが期待される。遺伝子の精密地図が利用できるようになって、染色体上に連鎖する機能遺伝子群が飛躍的に詳細な調査をすることが可能となって来つつある。野性遺伝子の持つ潜在的遺伝能力を理解するため、未知遺伝子の機能的発現を見いだす努力が育種学的にも緊急の課題である。本年度は、野性イネ系統から、浮イネ性や交雑不親和性を支配する因子を栽培イネに導入し、各種野性遺伝子の単離を行うと共に、発育遺伝学的解析を行った。 野性イネより一方向的交雑不親和性を引き起こすL_<c1>遺伝子が第6染色体上に見いだされた。一方向的交雑不親和性は、L_<c1>遺伝子をもつ雌性親がLcrを持たない花粉親と交雑した時のみ、交雑成功率が著しく低下する現象として検出される。T65L_<c1>を雌性親として、栽培・野性イネ系統を交配したすると、一般にJaponica・Javanicaは交雑成功率が低く、Indica・野性イネでは交雑成功率が高くなる傾向を示した。更に、Indica型や野性系統からその発現を抑制する因子が存在することが判り、L_<c1>遺伝子自体と連鎖して遺伝子複合体を形成していることが判明した。ここで観察された一方向的な交雑不親和性は、花粉管伸長の阻害によって起こるのではなくではなく、受精後の幼胚発育異常によると考えられた。多くの雑種植物で観察されるように、幼胚発育異常は、胚乳組織の崩壊に起因することが示唆された。この現象は非メンデル遺伝を示し、受精機構における雌雄両配偶子の機能的分化を反映すると考えられた。
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