イネの色素体の相互転換に伴っておこる構造と機能の変化を把握するため、電子顕微鏡による構造解析とSDS-PAGEによる色素体のタンパク質の変化を追跡した。その結果、(1)プロプラスチドから葉緑体への緑化過程と、葉緑体からプロプラスチドへの脱緑化過程の変化は、微細構造的にみて可逆的変化であった。(2)色素体の構造変化に伴って、数種のタンパク質の特徴的な出現と消失が認められた。すなわち、可溶性画分中には緑化過程では53KDと15KDのタンパク質が増加し、脱緑化過程では52KDと15KDのタンパク質が減少した。非可溶性画分中には緑化過程では29KDと28KDのタンパク質が増加し、脱緑化過程では28.5KDと28KDのタンパク質が減少した。これらのタンパク質の増減が色素体の構造の維持と転換にかかわっている可能性が示唆された。 ブラシノステロイドの光合成への関与を解析するため、^<14>C-エピブラシノライドの細胞内の局在性が研究された。核・葉緑体・ミトコンドリア・細胞膜・可溶成分の5画分のうち、放射活性は葉緑体画分が最高で、しかも時間の経過と共に増大した。つぎに、葉緑体内における^<14>C-エピブラシノライドの局在を明らかにするため、葉緑体包膜の外膜・内膜・チラコイド膜および可溶成分の4画分の放射活性が調べられた結果、チラコイド膜が最高で、時間の経過と共に増大した。 イネの培養細胞における色素体の発達の著しい特徴は、チラコイド膜の形成とほぼ同時にデンプン粒が形成されることである。デンプン粒は色素体の発達過程を通して局在するが、色素体の脱分化過程では消失する。もう1つの特徴は、一般の植物では葉緑体の脱分化過程でチラコイド膜が崩壊して、代わりにプラスト顆粒が蓄積するが、イネの培養の色素体では、プロスト顆粒が消失してプロプラスチドに到達することである。
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