研究概要 |
ソース器官における光合成同化産物供給量の減少に対する,シンク各器官への同化産物の分配と利用システムの短期的応答を解析した。 密閉チャンバ内に水稲幼植物を入れ,定濃度定比活性の^<13>CO_2を8時間供与した.供与終了後材料を経時的に採取するとともに,地上部と根の呼吸量および^<13>C濃度を経時的に測定した.この際,実験開始2日前から光強度を対照区の30%に減少した遮光区をもうけた。 同化終了直後における全植物体の^<13>取り込み量は遮光区において対照区の約33%てあった。遮光処理はシンク器官への分配率を変化させた。根と分げつへの分配はそれぞれ8%と80%減少し,新葉では23%増加した.また葉鞘への分配の減少が認められた。新根への分配は78%減少したが,古根では64%増加した。これは新根の新たな発生が遮光により抑制されたためである。 呼吸中の新規固定炭素割合(RSA)は同化終了後の暗期中では対照区の約68%であったが,引き続く明期の終わりには82%となった。このことは遮光処理による新規固定炭素の供給量の減少によって,貯蔵炭素に由来する呼吸割合が増加することを示している。また同化終了後の暗期中ではRASは新根において30%,古根で36%,地上部で32%低下した。このように地上部と地下部で大きな差は認められなかった。いっぽう全呼吸量は新根で63%,古根で4%地上部で38%低下した。新規固定炭素の供給減少を契機として、根においては新根の発生の低下による新たなシンクの形成を抑制するいっぽう、すでに存在する古根への同化産物の供給を優先させる体制を形成すると考えられた。 以上のように,光合成同化産物の分配と利用は,光環境の短時間の悪化に対応して動的に変化することが示された。
|