NaCl溶液(20mmol l^<-1>)を根に加圧してNa^+分離排除効率を測定する際の主要な条件である処理液の温度、pH、圧力および根の部位の違いと排除効率との関係を検討するとともに、イネ10品種およびトウモロコシ、ソルガムの排除効率を比較測定した。その結果、排除効率は、トウモロコシ>ソルガム>イネの順に高く、そしてイネでは品種間差異が認められ、高圧下の排除効率は根のリグニン含有率と正の相関関係にあることが認められた。また、中心柱からの出液を得ると排除効率が著しく高まること、根の先端部を接着剤で覆った根で排除効率が高いこと、さらに、約40μの孔をイネの根の外皮および厚壁組織部分に開けた場合には排除効率が低下することを認め、イオン排除が根の成熟帯でも起こり、外皮および厚壁組織部分と内皮部分が排除機能に重要な役割を果たしていることを明確にした。また、NaCl濃度を40mmol l^<-1>に高めた場合にも高い排除機能が認められ、さらに、排除効率は高圧下で高いことを明確にした。また、処理液の温度、pH、および溶存気体量を異にした場合にも、根に変性が認められない程度であれば、排除に影響がほとんど認められないこと、蒸留水でNaCl水溶液を調整し加圧した場合にも、排除効率は培養液の場合と同様に高いことを認めた。さらに、排除効率は、Mg^<2+>>Ca^<2+>>Na^+>Cl^->K^+の順に高く、水和半径の大小によって効率が変化する傾向を認めた。また、代謝阻害剤処理では、排除効率の低下とともに、出液量の増大と、Na^+/Cl^-濃度比が1に近づくことを認め、代謝阻害剤処理による実験ではイオン通過の障壁部位が傷害を受けている可能性を指摘した。現在は、塩溶液中でのストレス・リラクゼーション・カーブの測定と、外皮および内皮細胞層の厚壁化の程度に注目した根内部形態の観察によるイオン透過特性の迅速評価法の確立を目指している。
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