本研究は平成5年度と6年度の2か年間にわたり、科学研究補助金(一般研究B)の支給を受けて行われたものである。本実験研究の目的は、光合成に関わる葉内の化学エネルギーの供給、すなわち光エネルギー量(Source)とそれを使用して行われる炭酸固定作用で消費されるエネルギー量(Sink)、両者のバランスの視点から、明反応系と暗反応系の作用機作を理解し、光合成における光エネルギー利用効率向上のための基礎的知見を得ようとするものである。具体的には、個葉を種々の環境下におき、それに対するガス代謝反応を捉え、明暗光合成反応の相互関係や光合成関連酵素(RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)の活性について解析を試みた。既に本研究では、いくつかの新しい手法を開発し、また、それを応用した実験を行った。その一つとして、表皮剥離法があげられる。個葉の表皮を剥離し、葉肉のガス交換速度を直接同化箱で測定することが可能であり、葉肉光合成速度の測定値から光合成関連の主要酵素(RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)のin vivo活性の推定が可能となった。本年度では、カンショ個葉とマングビーン個葉を対象に酵素活性と環境(CO2濃度、光強度、温度)条件との関係を解析した。また、これまでに回転セクタによる間欠照射法を改良進めてきたが、本法を応用し葉内のエネルギー状態を変化、調節して、それに対する光合成反応を解読することにより、エネルギーを背景とする明暗反応系の作用およびRuBPカルボキシラーゼとRuBPオキシゲナーゼの相対活性や特性を解析することに成功した。CO2固定反応の調節機構の解明の手がかりを得ることができたものと判断される。今後、研究を深めることにより、さらに新しい研究手法の開発やその応用による新しい知見を得られ、CO2固定反応調節機構をより鮮明に理解することができよう。また、光合成のエネルギー利用効率向上のための作物生理、育種上の理論の構築や実用的な手法の開発が可能となろう。この2か年間で得られた成果の一部は学術雑誌に発表、印刷済みである。
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