栽培作物である、イネ、ダイズ、アズキ、ジャガイモ、トウモロコシ等の体内に、分解されるとウキクサの花成を誘導する高分子の物質が存在するかを調べた。その結果、そのようなタンパク質性の物質の存在を確認した。この物質の分解産物は、lysineあるいはlysine hydroxamateである可能性を示唆する結果を得ている。植物が窒素欠乏状態になると、この前駆体タンパク質が分解し、分解産物であるlysineが増加する傾向も示されている。また、この物質をさらに活性化する機構が存在することが示唆されている。一方、これらの物質が、栽培作物の花成を誘導できるかどうかを調べることが重要である。しかし、栽培作物を実験植物として花成誘導物質をbioassayすることは、植物の大きさの点から不可能であり、実験室レベルのbaioassay系は存在しなかった。そこで、栽培作物の花成誘導機構を解明し、花成誘導物質を見いだすために、この系の確立を急いだ。いくつかの栽培作物の花成誘導条件を検討してきたが、本年度、ようやくアズキを材料にこの系を確立することができた。アズキは私たちの実験条件では、連続光下で草丈約35cmになり5節を分化してようやく小さい花芽をつける(花成率約66%)。しかし、成長を制御する工夫をすることにより、草丈約10数cmで3節を分化して大きな花芽形成する(花成率100%)ことがわかった。今後、この系を利用し発展させることにより、アズキなどの栽培作物の花成誘導機構を解明でき、またそれに関与する花成誘導物質を明らかできると思う。
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