本年度の成果は次の5点に要約できる。(1)栽培作物の花成誘導機構を研究し、花成誘導物質をバイオアッセイするには、花成反応を制御する系が必須である。昨年、早生夏アズキで、播種後36日目に草丈10数cmで花成反応を観察できる系を確立した手法に倣って、アズキ(丹波大納言)、ダイズ3品種(秋田、玉ほまれ、白大粒玉錦)で、同様の実験系を確立した。また、インゲンマメ(ナ-ル豆、セレモニ-豆)で、播種後15日で花成反応が観察できる系を得た。(2)得られた実験系において、ペプトン、カザミノ酸などの有機窒素化合物は花成を抑制した。また、タンパク質分解酵素の阻害剤エラスタチナ-ルは、花成遅延効果を示した。これらの結果は、上記の植物においてもアオウキクサと同様に、窒素欠乏による花成誘導機構が存在する可能性を示唆している。(3)上記の植物の葉中には、アオウキクサの花成を誘導する高分子化合物が存在する。この物質のそれぞれの種の花成誘導に果たす役割は不明であったが、この高分子化合物に由来する物質が、下位節の腋芽の花成反応を制御している結果が得られた。(4)窒素欠乏で分解され、花成誘導物質を生成すると考えられるアオウキクサのタンパク質のアミノ酸配列を知るため、SDS-PAGEで分離後、PVDF膜にブロッティングして、シークエンサーにかけた。しかし、N末端がブロックされていた。そこで、リジルエンドペプチダーゼで断片化し、そのアミノ酸配列を四でプローブを作成し、cDNAライブラリーから、問題のタンパク質をコードしている遺伝子の単離を行っている(5)花成反応を遺伝子レベルから解明するため、花の分化初期に発現する遺伝子の単離を試みた。インゲンマメの花のタンパク質をSDS-PAGEで分離後、PVDF膜にブロッティングして、花弁に特異的なタンパク質を単離した。しかし、N末端がブロックされていたため、現在上記と同様の進行をしている。
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