本研究の目的は、糖濃度の増加をもたらす機構として、生長期間に蓄積した多糖が追熱期間に加水分解して小糖濃度が増加する一方、通道組織の機能低下による水の流入低下が生ずるという、2つの条件が満たされるためではないかと考えたが、その考えを確かめることにある。 本年度は昨年に引続き、東京大学附属二宮果樹園栽植のキウイフルーツ"ヘイワード"の果実を1週間ごとに、4果ずつを収穫して、それらの果実の体積、成分濃度(デンプン、可溶性糖)、乾物率、水ポテンシャルについての測定を行った。成分濃度などの分析のために果実の赤道部周辺から組織切片を取り、冷凍保存した。一方、5個の果実を収穫せず、果実形状のパラメータを計測し、昨年度に求めた体積と果実形状パラメータの関係を適用してから体積を推定した。 果実の体積生長はシグモイド曲線を示した。体積増加の停止時期には組織の水ポテンシャルが特異な変化を示すことはなかった。体積の95%は水で占められ、その割合がほとんど変わらないことから、果実の乾物生長は水の流入の停止とともに終わることを意味していた。成分の分析は現在実施しているところであるが、体積増加停止時に存在する貯蔵炭水化物はその後増えることはないので、その後追熱時に加水分解される可溶性糖の量を決めることになるであろう。なお、他の種類の果実についてのデータを取り、比較検討する必要がある。
|