本研究は、果実の品質に大きな影響を及ぼす糖濃度を制御するための基礎研究である。果実中の糖については、これまで濃度そのものが数多くの研究で研究対象となっているが、濃度が成分量と水分量の2つの要因の関数であるという事実を考慮し、別けて研究したものは少ない。この2つの要因がどの程度相互に依存し、独立して変動しているのかはまだ明らかでない。 本研究では、特にデンプンを蓄積するキウイフルーツ果実を対象として、その加水分解産物である糖の増加と水の流入の関係を調べた。 その結果、デンプンの蓄積は果実発育の早い時期から起こり、果実の肥大生長が盛んに起こっている発育第3期前期にすでに最高濃度となった。その間の糖濃度は低かった。しかし、肥大生長がほぼ終了する第3期中・後期になると、糖濃度の上昇が急速に進み、末期では、明らかにデンプンの加水分解が糖濃度の上昇の一因であることが示された。一般に、糖濃度の増加は水ポテンシャルの低下を招き、細胞内への水の流入を引き起こし、結果的に濃度増加が起こらなくなるのであるが、そのようにはならなかった。この事は、水の流入を妨げる要因があったこと示唆している。水流入を阻止する機構としては、果柄内維管束の抵抗の増大、細胞膜の半透性の低下、細胞の伸展性の極端な低下の少なくとも3つの原因が考えられるが、膨圧の大きな上昇が観察されなかったので、第3の可能性は否定された。 以上、キウイフルーツ果実では、果実生長第3期はデンプンの加水分解と水の流入低下の両者が同時に起こる時期であり、ともに糖濃度増加に関係していることが示された。
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