研究概要 |
本研究は、今まで申請者らが確立してつたカキ主要品種の組織・細胞培養系を利用して、ソマクローン変異の誘起を試み、細胞融合による品種改良の方法を開発するとともに、非還元花粉の利用によって3倍性胚を獲得し、優良甘ガキ品種育成の可能性を探ろうとしたものである。得られた成果の概要は以下のとおりである。 (1)‘次郎'カルスを用いて、γ線照射(0.5〜10kR)とPFP処理(4〜500μM)を行ったところ、カルス生長も不定芽形成も抑制された。生長が抑制されたカルスからの再生個体について形態とアイソザイム(MDH,GPI,MDH)変異を調査したが、いずれも元の‘次郎'個体との間に変異が認められなかった。 (2)完全甘ガキ数品種のプロトプラストを電気的に融合させた。融合細胞から生じたカルスのDNA量をフローサイトメータで計測したところ親カルスの2倍になっていた。また、この手法により‘次郎'と‘駿河'を融合させた個体をRAPD分析したところ、両品種の体細胞雑種のみを生じており、同種の細胞が融合して生じた個体はなかった。染色体数を計測したところ、いずれも180で12倍体になっていることが確認された。 (3)カキ数品種の花粉のサイズ分布を調べたところ、巨大花粉が観察さ、‘禅寺丸'、‘甘四溝'では約10%、‘晩御所'では約2%の役割で含まれていた。これらの巨大花粉は非還元花粉であることが核DNAの測定によって確認された。そこで、これらの巨大花粉をナイロンメッシュで分別し、‘禅寺丸'は‘次郎'に、‘晩御所'は‘富有'に交配し、その未熟胚を摘出して胚培養を行った。得られた実生個体の染色体数はいずれも3倍性の135(9倍体)であることが確認された。
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