研究概要 |
ネギ属の種間交雑は,通常の受粉法では広範な不和合性が存在するため雑種の獲得は困難であるが,花梗基部より切り離した切花に対し花柱引抜き受粉を行い,更にその後胚救済を組合わせることにより,通常の受粉法に比べ,雑種の獲得率が格段に向上することを明らかにした.現在本法によってえた多数の種間雑種を,育成中である。 一方PCRによる遺伝子の増幅と,これにRAPD法を組合わせたDNA多型分析については,次の諸点を明らかにした.(1)幼葉からのDNAの抽出法とPCRによる増幅法を確立した後,観賞用ネギ10種のRAPD像を比較し,系統発生に関する類縁関係の推定が可能なことを明らかにした.(2)DNAの微量抽出法に改良を加え,2〜4mgの葉試料でも十分供用に耐えうる新しい抽出方法を開発し,RAPD像の分析から種間雑種の極早期の検定を可能にした.(3)Taq DNAポリメラーゼはPRCに多用される酵素であるが,誤ったヌクレチドのとりこみがあり,RAPD多型の分析に混乱を来し易い,しかし少量のPfuポリメラーゼの添加により,RAPDパターンは大幅に改善された.(4)異なったポリメラーゼの混用でRAPD像を改善しうることが明らかにされたので,TaqまたはTthポリメラーゼにPfuポリメラーゼを混用して,ニラのアポミクシスの程度を調べ,それが90〜95%であることを示した.(5)精子や胞子でその例はあったものの,PCRによるDNAの増幅がただ1個の花粉粒からでも可能なことを,高等植物で始めて明らかにした.今後本法は多方面の研究分野で,広範な応用が期待される。
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