平成6年度の研究では各種のAlternaria属菌を用い、Alternaria brassicicolaのアラビドプシスに対する病原性との比較検討をした。その結果、アブラマナ科に感染性のないAlternaria属菌はアラビドプシスに全く侵入を行わないのに対し、A.brassicicolaは侵入後、侵入点下部の植物組織に進展した後、菌糸の進展が抑制されることを見いだした。アラビドプシスはA.brassicicolaの侵入はゆるすものの更なる菌糸の進展を抑制する何らかの抵抗性機構を有していると推定された。この結果からアラビドプシスの突然変異株の選択基準として、従来の選択基準である菌の侵入を全くゆるさない抵抗性株に加え、侵入後の菌糸の進展を抑制しない変異株の2種を選抜基準とし、現在さらに突然変異株のスクリーニングを行っている。また、変異株のスクリーニングをより広範なものにするために、アラビドプシスにAgrobacterium tumefaciensのT-DNAを挿入した挿入変異株系統のスクリーニング、M2種子獲得の為の独自のM1系統の作成を行っている。また、アラビドプシスの変異株の選択を容易にするため、病原菌にレポーター遺伝子を組み込んだ形質転換株を作成しており、これを利用して変異株の選択を進めたい。一方、病原菌の病原性因子の探索として、アブラナ科植物に感染能を有する炭そ病菌Colletotrichumhigginsianumの遺伝子ライブラリーを作成し、ウリ科植物に感染する炭そ病菌Colletotrichum Iagenariumの形質転換による病原性の相補実験を行い、病原性遺伝子の探索を進めている。
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