1.低温処理、結紮処理、神経節摘出実験を組み合わせ、胸部に存在する抑制因子と腹部に存在する成熟因子の休眠期ならびに休眠覚醒期におけるそれぞれの生理学的機能を検討した結果、両因子とも胸部および腹部神経節には存在せず、液性系を介して発現することが明らかになった。 2.抑制因子と成熟因子を同定するために、前幼虫体または体液から各種有機溶媒でペプチド画分を抽出し、Sep-Pakを通した後、数回の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)でそれぞれの活性画分を単離精製した結果、抑制因子はほぼ単一画分として精製中であり、成熟因子は現在最終の精製段階に入っている。 3.両因子をホルモンとして同定するために、研究代表者が開発した2種類の生物検定法を使用し各活性画分を調査した結果、いずれも適切であることが判明した。 4.両因子は前幼虫の特定の部位から分泌されると考えられるので、既知のペプチド抗体を使用し免疫組織化学的手法で分泌器官を予備的に検討した結果、中腸でFMRFamideやPPに反応する部位を観察した。 5.成熟因子は、免疫組織化学的手法でカイコ羽化ホルモンとは異なることが判明し、しかも生理作用が類似しているアワヨトウのPBANとも異なることが注射法で明らかになった。これらの結果から、本因子は新しい昆虫ホルモンの可能性がある。
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