研究概要 |
天蚕は卵越冬するが,卵殻内で前幼虫態のまま休眠している.イミダゾール化合物を利用して,この休眠覚醒や人工孵化に成功しているが,そのメカニズムについては明らかにされていない.本研究では,すでに提案した前休眠態休眠の制御モデルに従って,休眠を維持するための抑制因子(Repressive factor,RF)と休眠覚醒期および後休眠期をコントロールする成熟因子(Maturation factor,MF)の構造解析をおこなった.その成果は以下の通りである. 1.中胸に存在しイミダゾール化合物によって消去されるRFは,低温処理によっても同様に消失し,休眠覚醒が誘導されることが明らかになった.このことは,中胸にはイミダゾール化合物の作用部位があり,しかも低温受容器も存在することを指摘している. 2.MFは,免疫組織化学的研究によって,羽化ホルモンではないことが判明した. 3.MFの生物検定法を確立し,部分精製することに成功した. 4.MF活性は,前幼虫のみならず5齢血液中にも存在することが明らかとなった. 5.RFとMFは,ペプチド様ホルモンであり,FXPRLamideペプチド群に属さない新しい昆虫ホルモンであることを示唆することができた.
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