人工飼料育蚕糸の化学組成と構造に関する研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454064
• 研究機関: 京都教育大学
• 研究代表者: 杉本 弘子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20027684)
• 研究分担者: 松原 藤好 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (50027877) ; 大島 敏久 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10093345)
• キーワード: 人工飼料育繭糸 / 桑繭糸 / オカラ / アミノ酸組成 / 黄変度 / 溶解特性

研究概要

蚕の人工飼料育に関する研究は多々あるが、、飼料や飼育法に関する研究に比べて、得られた繭や蚕糸の基本的性質に関する研究は少ない。本研究では人工飼料育蚕糸を構成するタンパク質の成分組成と化学構造等々を、対照とする天然桑葉育蚕糸のそれらと比較し、飼育条件と構造特性との関係を明らかにすることにある。平成5年度は人工飼料育蚕糸2種[産業廃棄物であるオカラを50%含有する人工飼料(オカラ50飼料とする)と脱脂大豆粉末を主成分とする人工飼料(標準飼料とする)および桑葉育による蚕糸(桑蚕糸とする)]を生産し、これらの繭糸品質、操糸性、精練挙動、セリシン、フィブロインのアミノ酸組成、結晶構造、結晶化度等について検討した。平成6年度は先の結果をもとに、オカラ含有人工飼料により生産された繭糸セリシンの溶解特性、セリシン各分画のアミノ酸組成、繊維構造などについて検討した。さらに、オカラ含有人工飼料により生産された繭糸は桑糸繭に比べて紫外線照射による黄変が小さいという特性について、セリシン各分画中のアミノ酸組成や紫外線吸収スペクトルの分析などを行ない、次のような結果を得た。絹フィブロンは化学組成、微細構造などはオカラ含有人工飼料により生産された繭糸と桑糸繭はほとんどからなかったが、繭糸セリシンはアミノ酸組成、熱水に対する溶解性は両者のあいだに大きな違いがあることが認められた。両者とも溶解曲線は3つの折れ曲りがあり、溶解特性の異なる4つの分画が得られたが、溶解速度はオカラ含有人工飼料が桑糸繭のおよそ2倍で、とくに初期溶解速度が極めて速いことが認められた。飼育飼料の違いによる繭糸の紫外線照射による黄変度は、桑繭糸が最も高く、オカラ人工飼料繭糸はほとんど着色しなかった。これは桑繭糸に比べ、オカラ人工飼料繭糸はセリシン第1分画中に260nm付近で紫外線吸収をもつデオキシシチジル酸(dCMP)、あるいはシチジル酸(CMP)が多く検出されたこと。さらに、dCMPおよびCMPで処理した桑繭糸は未処理繭糸に比べて黄変が小さかったことから、dCMP,CMPは黄変防止効果に強く関わっていることが推察された。

研究成果

• [文献書誌] 松原 藤好: "全齢3回給餌法による原産の飼育成績およ産卵成績" 日本蚕糸学雑誌. 64,1. 35-38 (1995)
• [文献書誌] 松原 藤好: "真気空調装置による人工飼料無菌全齢1〜2回給餌育" 日本蚕糸学会要旨集. (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "原種の全齢人工飼料無菌飼育に関する研究 全齢3回給餌飼育法による飼料利用効率" 日本蚕糸学会要旨集. (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "人工飼料無菌飼育による周年養蚕に関する研究-日原町蚕無菌生産研究センターの成績-" 日本蚕糸学会要旨集. (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "空中散布農薬の蚕への毒性に関する研究-特に無菌条件下における濃度と毒性-" 日本蚕糸学会関西支部研究発表要旨集. (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "全齢人工飼料2,3回給餌おける飼育成績および飼料利用効率" 日本蚕糸学会関西支部研究発表要旨集. (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "無菌蚕に容限界量および100%致死濃度のカドミウムを投与した場合の蚕体内無機元素濃度の変動について" 日本蚕糸学会関西支部研究発表要旨集. (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "日本蚕糸学会関西支部研究発表要旨集" 全齢人工飼料無菌飼育法による周年繭生産に関する研究-中国産桑葉粉末の利用-, (1994)
• [文献書誌] 松原 藤好: "日本蚕糸学会関西支部研究発表要旨集" 全齢人工飼料無菌飼育法による周年繭生産に関する研究-全齢3回給餌法で製造した蚕種による繭生産-, (1994)