研究概要 |
1)性染色体のクロマチン構造の研究:ニワトリのW染色体の大部分とZ染色体の一端部は核内で顕著なヘテロクロマチンを形成している。蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)によりW染色体に特異的な反復配列であるXhoI-およびEcoRI-ファミリーがW-へテロクロマチンの主要構成成分であることが分かった。両ファミリー配列は高度湾曲性を示す特殊な高次構造を示すことから、クロマチン構造の特殊性が予想されたが、これらの配列はヌクレオソーム構造を基本としたクロマチンを形成していることが分かった。しかし、ヌクレオソーム間のリンカーDNA鎖長が通常より約20bp長いことが示され、リンカー部分へのタンパク質の結合が示唆された。XhoI-ファミリーの0.7kb反復単位を末端ビオチン化し、ストレプトアビジンを結合した磁気ビーズに固定し、ニワトリのMSB1細胞の核内タンパク質と反応させることにより、同ファミリーDNAに直接またはタンパク質間相互作用で高親和結合する一群のタンパク質を分離した。 2)性染色体の遺伝子機能の研究:レーザービームによるマイクロダイセクションとランダムPCRにより1本のW染色体および1本のZ染色体の端部から多数のゲノムライブラリーを作製した。これらのライブラリーから得られたクローンをさらにプローブとして雌ニワトリのゲノムライブラリーをスクリーニングして、これまでにW染色体の非反復領域中の約50kbの配列とZ染色体端部のヘテロクロマチン領域由来のクローンを取得した。一方、Z染色体上の2種の遺伝子(IREBP,ZOV3)のcDNAクローニングとFISHによる染色体上の局在部位決定を行なった。IREBPは従来細胞質アコニターゼとして知られていたものであり、ZOV3は免疫グロブリンスーパーファミリーに属するが、卵巣特異的に発現する新規の遺伝子であることが分かった。
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