研究概要 |
ニワトリの性染色体はZW型で雌ヘテロ(ZW)、雄ホモ(ZZ)の構成である。W染色体の約2/3の領域とZ染色体の一端は顕著なヘテロクロマチンを形成する。W染色体上の遺伝子はまだ知られていない。Z染色体上の遺伝子でクローニング、塩基配列決定、局在部位決定がなされたものは研究代表者らが1993年に発表したZOV3,IREBP遺伝子のみである。本研究の概要は以下の通りである。 1)Z染色体端部ヘテロクロマチンの構成DNAの性質:雌ニワトリのゲノムライブラリーから約13Kbのインサートを含むpCHZTH8クローンを得た。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により、この配列がZ染色体端部のヘテロクロマチンを構成するマクロサテライトDNA配列であることが分かった。この配列の一部にはキジ目に共通のものがあるが、大部分はGallus属(ニワトリ、野鶏)に特異的で、進化上新しく増幅した配列と考えられる。 2)Z染色体上の2種の遺伝子の遺伝子機能、染色体上の局在部位、進化上の保存性:ZOV3は卵巣特異的に発現し、cDNA配列から免疫グロブリンスーパーファミリーに属する新規遺伝子であることが明らかになった。IREBPは哺乳類のiron responsive element binding protein(細胞質アコニターゼとして知られていたもの)のホモログである。FISHによりZOV3はZ染色体の短腕中央部、IREBPは長腕のヘテロクロマチン末端に極く近接した部位に局在することが分かった。5つの異なる目(order)にわたる鳥類種で両遺伝子がZ染色体上に保存されていることが雌雄ゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションの結果から示された。 3)W染色体中の非反復DNAの検索:レーザーマイクロビームによるダイセクションとシングルユニークプライマーを用いる比較的ランダムなPCR増幅により1本のW染色体由来のゲノムライブラリーを構築し、XhoI、EcoRIファミリー反復配列を含まないクローンを多数取得した。これらの中からCW01,CW02の2クローンを選び、これらをプローブとして雌ニワトリの全ゲノムライブラリーを検索して、それぞれの配列を含む約25kbずつのW染色体非反復DNA領域をカバーするクローン群を得た。
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