平成7年度の研究実績概要は、以下の通りである。(1)前年度に続いて大腸菌の増殖定常期に特異的な主要型シグマ因子(σ38)のプロモーター選択性について解析を進めた。大腸菌のコンセンサスプロモーターの配列要素を変化させた改変プロモーターを用いることにより、Eσ38ホロ酵素が基本的に-35領域を必要としないことを確認した。(2)σ38(ならびにσ70)蛋白質のどの領域がプロモーターの選択に関わっているかについての解析を行った。そのために、σ蛋白質の領域2(2.1-2.4)と領域4.2を中心として、σ38とσ70のキメラ分子、あるいはσ38の欠失変異体などを作成した。それぞれ過剰生産させた蛋白質の分離・精製を行った。コア酵素とのホロ酵素の再構成を行い、in vitroの転写実験により、プロモーター選択性と転写活性の強さを調べた。その結果、σ70とσ38の領域2と4.2とを組換えることによってプロモーターの選択性が変化することを明らかにした。一方、σ38の領域4.2からC-末端の間の数アミノ酸を欠失したような変異体は、元のσ38よりも活性が増大することを示したが、さらに領域4.1以降を完全に欠失したような変異体蛋白質もシグマ活性を持つことを確認した。このような結果はσ38の領域4.2からC-末端の間の数アミノ酸の領域が転写活性を抑えるような働きを持つ機能ドメインを構成していることを示している。またσ38がプロモーターの-35配列を必要としないと言う知見とも一致する。(3)ラン藻(Synechococcus PCC7942)の主要型σ因子様蛋白質が実際にプロモーター認識能をもつことをin vitroの転写実験により示した。
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