本研究の目的は、ペルオキシソームのアシル-CoA酸化酵素(ACO)に対する失活抑制活性をもつことを見出してPXP-18と命名した、酵母の16kDa蛋白質の作用機構とその生理的役割を明らかにすることである。ペルオキシソームの内部が常に強い酸素ストレスに曝されていること、このオルガネラへの輸送においても蛋白質は一時的な変性状態を経ることから、ペルオキシソームにも分子シャペロン様蛋白質が存在しているはずであるのに、未だに一例もその報告がない。 1)PXP-18の本質を正しく理解するためには、その細胞内局在部位を明らかにしておく必要がある。細胞分画法、オルガネラの可溶化前後での酵素酵素抗体法による定量および免疫電子顕微鏡法によって、PXP-18がペルオキシソームのマトリックスに局在することを明らかにした。 2)30μMのACOは生理的なストレス温度に近い48度でゆっくり失活する。PXP-18はこの失活をほぼ完全に且つ特異的に抑制した。円偏光二色性の測定からACOは48度では極めて僅かにしか変性せず、70度では非可逆的にまた完全に変性することが示された。一方PXP-18の70度での変性は僅かでまた可逆的であった。PXP-18の存在下に70度で加熱するとACOの一部はPXP-18と等モル複合体を形成し、一部は可溶性の状態で存在していた。可溶性の部分は二次構造的にも比活性の上からも無処理のACOと殆ど区別がつかなかった。またPXP-18は2Mの尿素で変性させたACOを有意に且つ特異的に回復させた。これらの結果はPXP-18がペルオキシソーム内部の生理的な条件下で分子シャペロン様の役割を果たす蛋白質であることを期待させる。
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