研究課題/領域番号 |
05454076
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 浩紀 九州大学, 農学研究科, 教授 (60038271)
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研究分担者 |
麻生 陽一 九州大学, 農学研究科, 助教授 (10117054)
緒方 靖哉 九州大学, 農学研究科, 教授 (20038277)
向井 純一郎 九州大学, 農学研究科, 教授 (70038199)
白畑 實隆 九州大学, 農学研究科, 助教授 (90154377)
立花 宏文 九州大学, 農学研究科, 講師 (70236545)
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キーワード | モノクローナル抗体 / 糖鎖修飾 / 食品 / 動物細胞 / 軽鎖 / 培養工学 / 培地 / 単糖 |
研究概要 |
免疫グロブリン分子の軽鎖は単純ポリペプチド鎖であり、糖鎖は存在しないが、稀に可変領域にN-結合型糖鎖が結合していることが知られている。ヒト型ハイブリドーマHB4C5の産生する抗体の軽鎖にもN-結合型糖鎖が可変領域に結合しており、その糖鎖が抗原認識に関与していることを明らかにしてきた。そこで、この肺ガン特異的ヒト型モノクローナル抗体HB4C5の軽鎖に結合する糖鎖の機能を検討するために糖鎖構造の改変を試みた。その手段としてまず、糖鎖合成変異細胞による本抗体の産生を試みた。糖鎖合成変異細胞はこれまで数多く取得されているが、それらはほとんど細胞障害性レクチンに対する耐性を指標に選択されている。そこで、レクチンを糖鎖合成変異細胞の選択薬剤として用いた。糖鎖結合軽鎖を分泌するハイブリドーマの糖鎖合成変異株を数種、植物レクチンの一種であるコンカナバリンAに耐性な細胞の中からスクリーニングすることができた。さらに、こうして得られた変異細胞は、本来の抗体の持つ結合活性とは異なる結合活性を有する抗体を分泌していることが明らかになった。続いて、細胞の培養条件検討において、グルコース濃度を低下させたり、グルコースの代わりに他の単糖類を同濃度添加した培地でこうしたハイブリドーマを培養することにより、軽鎖に結合する糖鎖に変化が観察された。さら軽鎖の糖鎖修飾における変化は、抗体の抗原認識に影響を及ぼしていた。こうした変化は元の培地成分に戻すことにより回腹した。培地成分(糖組成)が細胞の抗体糖鎖合成に影響することが判明したが、グルコースを置換した培地では、細胞の存在率が悪く長期継代培養が困難であり、増殖阻害を起こさない様な培地組成の食品成分を含めた検討が今後の検討課題であった(平成5年度)。そこで、培地中の糖源として、グルコース以外にNアセチルグルコサミンを添加し、またその存在比を調節することにより、抗体産生能及び細胞生存率を低下させることなく抗体の抗原結合活性を著しく増大させることができた。さらに、グルコース濃度の抗体軽鎖の糖鎖修飾に対する効果は、血清成分に影響を受けることが明らかとなった。一方、動物細胞による糖タンパク質の糖鎖修飾は以上のようにその培養環境の影響をうけるので、その糖タンパク質糖鎖の正真性、均一性を維持することは特に重要である。抗体軽鎖の糖鎖修飾において培地中のグルコースレベルの変動に寛容な細胞株をレクチン耐性変異細胞の中に見いだした(平成6年度)。
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