研究概要 |
本研究は,下層の生育に有利な条件をもつ林縁付近を利用した複層林の造成をめざし,陽光と林縁の構造の関係について調査追究したものである。調査は,スギ人工林2林分,ヒノキ人工林1林分(異なった構造の2林縁),落葉広葉樹天然生林1林分,モミ天然林1林分の合計6林縁で林縁および林内の林分構造,光環境および下層植生の種構成や現存量を調査した。得られた主な結果は以下のとおりである。 1.形成されて十分年数が経過した林縁では,林縁付近の林分現存量が林内よりも高い。しかし葉面積指数の非破壊的方法(LAI-2000)による測定では葉量の差はないと推察された。 2.林内の光環境におよぼす林縁の影響は,人工林では林縁から上層木の樹高まで,天然林では樹高の1.5倍までであるが,林縁木の枝下高が低いと影響の範囲はきわめて狭くなる。 3.林縁付近の下層植生の現存量は,下層植生が受ける陽光量に対応して減少するが,針葉樹人工林や落葉広葉樹林など林分の種類によって減少の程度が異なる。 4.天然林の林縁付近に生育する高木種の稚樹の大部分は林分の構成種である。人工林の林縁付近でも,近くに天然林があれば少数の広葉樹の高木種稚樹が生育している。 以上から,林縁付近の林内側の光環境の制御は,林縁木の下枝高の調整で行うことが妥当であると考えられた。針葉樹人工林の林縁付近で,光環境を調整することにより針広混交林の育成の可能性が示唆された。しかし,この限られた調査結果では,林縁の構造と光環境の関係を具体的に普遍化することは困難であった。今後より多くの林縁の調査を加えて,林縁構造の諸要因と光環境の変化との関係を解析し,簡略な数式化を試みたい。
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