研究実施計画に従って行った平成6年度の研究結果は以下のように要約される。 1.昨年度(平成5年度)と同様に、シマアジの神経壊死症原因ウイルス(SJNNV)に対するウサギ抗体を用いたELISA法により、シマアジ親魚の血清抗体の有無を検査して、選別産卵させた。その結果、抗体保有親魚に比べて抗体が検出されなかった親魚から得られた仔魚では病気の発生頻度が低かったものの、親魚抗体の有無による選別産卵は本病の防除法として絶対的ではないことが再確認された。 2.昨年度確立したPCR法によるウイルス検出系によりシマアジ病仔魚のみならず感染耐過した稚魚からもウイルスが検出されたことから、本PCR法は不顕性感染魚からのウイルス検出にも使用しうることが明らかとなった。また本法はシマアジ以外の魚種におけるウイルス性神経壊死症の診断にも有効であった。 3.PCR法による高感度ウイルス検出系を用いて、産卵直前のシマアジ親魚の生殖巣の一部からウイルスの検出を行った。予想に反してウイルス陽性親魚の出現率は抗体保有率に比べてかなり低かったが、ウイルス保有親魚からの仔魚には100%病気が発生したのに対し、生殖巣からウイルスが検出されなかった親魚から得られた仔魚には病気は発生しなかった。従って、PCR法による親魚選別は本病の防除に有効であると判断された。ただし、初回の産卵時にはウイルス陰性であった親魚においても、10回以上産卵が繰り返されるとウイルス陽性に転じる傾向が認められたことから、産卵によるストレスが魚体内でのウイルスの増殖を誘発すると考えられた。
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