ウイルス性神経壊死症(VNN)はわが国のみならず諸外国での海産魚の種苗生産において最大の脅威となっており、現在までのところその宿主は3目8科15魚種と極めて広い。本ウイルス病の主要感染源は産卵親魚であることから、本研究ではこの垂直伝播を遮断すべく、ウイルス・フリー親魚の選別法を確立することを目的とした。研究成果の概要は以下のとうりである。 1.シマアジの神経壊死症原因ウイルスに対する家兎抗血清を用いた間接ELISAによるシマアジ親魚血清からの抗体検出系を確立し、この体検出系を用いて抗体保有の有無によりシマアジ親魚を選別し産卵させた。その結果、抗体保有親魚に比べて抗体が検出されなかった親魚から得られた仔魚では病気の発生頻度が低かった。しかしながら、親魚抗体の有無による選別産卵は本病の防序法として絶対的ではないと判断された。 2.本ウイルスの構造タンパク質遺伝子(RNA2)の塩基配列を決定し、PCR法によるウイルス核酸の検出系を確立した。本PCR法によりシマアジ病仔魚のみならず感染耐過した稚魚からもウイルスが検出されたことから、本PCR法は不顕性感染魚からのウイルス検出にも使用しうることが明らかとなった。また本法はシマアジ以外の魚種におけるウイルス性神経壊死症の診断にも有効であった。 3.PCR法によるウイルス検出系を用いて、産卵直前のシマアジ親魚の生殖巣の一部からウイルスの検出を行った結果、ウイルス保有親魚からの仔魚には100%病気が発生したのに対し、生殖巣からウイルスが検出されなかった親魚から得られた仔魚には病気は発生しなかった。従って、PCR法による親魚選別は本病の防序に極めて有効であると判断された。
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