八丈島産海綿Theonella swinhoeiから各種クロマトグラフィーを駆使し、強力な細胞毒性(P388マウス白血病細胞IC_<50>0.07-0.08ng/mL)を示す三種のポリペプチドpolytheonamides A-C(当初theostatinA-Cと命名したが、種々考慮の上polytheonamide A-Cに改名)を単離した。 各アミノ酸残基の化学構造ならびにアミノ酸配列は、各種二次元NMRデータの解析から決定した。これらは、いずれもN末端がカルバモイル基でブロックされた48残基のアミノ酸からなるポリペプチドで、そのアミノ酸残基の約半数はt-LeuやβOHValなどの異常アミノ酸であった。 また、主成分のpolytheonamide Bの各アミノ酸残基の絶対立体配置は、化学的部分加水分解を行い、Marfey法などの手法を用いて決定した。その結果、DおよびL型アミノ酸が交互に存在する興味ある配列であることが判明した。 NH_2CO-Gly^^1-L-βMeIle-Gly-L-t-Leu-D-t-Leu-L-t-Leu-D-Ala-L-t-Leu-D-t-Leu-L-Ala^^<10>-Gly-L-Ala-D-t-Leu-L-Ala-D-Asm-βOHVal-Gly-L-Ala-Gly-L-t-Leu^^<20>-D-Asm-βMeGln-βOHVal-L-Ala-Gly-Gly-D-Asm-L-Ile-D-βOHAsm-L-t-Leu^^<30>-D-βOHVal-Gly-D-Asm-L-Ile-D-Asm-L-Val-D-βOHAsm-L-Ala-D-Asm-L-Val^^<40>-D-Ser-L-Val-D-Asn-OH-t-Leu-D-Asn-L-Gln-L-Thr-D-aThr^^<48> NMRならびにCDスペクトルから、polytheonamideBはクロロホルム-メタノール(1:1)中でヘリックス型のコンフォメーションを形成することが示唆されたので、NMRからの情報をもとにDADAS90プログラムにより構造計算をおこなった。その結果、polytheonamideBは、この溶媒中で右巻きのβ-ヘリックス型のコンフォメーションをとることがわかった。このコンフォメーションは、チャンネル形成性ペプチドのgramicidin Aが脂質二重膜中でとるものと同じコンフォメーションであることから、polytheonamideBの活性発現はこの筒型コンフォメーションに関与することが推察された。
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