生産者グループ型産直及び協同組合間協同の実態について、前者は房総食料センターと船橋農産物供給センター、埼玉産直センター、後者は大分県下郷農協、宮崎県綾町農協を対象にして機関調査と予備的な農家調査を行った。価格設定に当たってはラフな「生産費」をベースとしながら、需給関係に強く左右されている。有機農産物の需給は局面的には過剰傾向も発生しており、農家所得の最大化のためには、価格を下げても販売数量をできるだけ増大させるという販売行動がとられていることがわかった。 また、東京都中央卸売市場・大田市場のT卸売会社が取り扱っている「個性化農産物」について、品目別取扱数量・金額の推移、取扱上の問題点などについて調査を行った。その結果、取扱数量・金額は前年度よりも増加傾向にあるものの、セリ方式による価格変動は避けられず、産直流通の副次的な流通にとどまっていることや、買手が要求する品揃えや安定的な供給が実現できていないことが明らかになった。 以上の結果から、次のように考察できる。 有機農産物の生産者価格形成に及ぼす要因として生産費と販売数量及び卸売市場価格がある。緊密な産直とくに個別農家型産直の場合は、農家の生計費を担保する農業所得が得られるように平均的な販売数量に応じて価格を決定しており、その価格変動は少ないことが明らかになった。 しかし、生産者グループ型産直や農協型産直の場合、販売数量が飛躍的に増大することに伴い、取引相手先も拡大している。その場合、ラフな「生産費」を基準にした基準価格を設定するが、供給量が過剰傾向の時には、販売数量をより増大させるために価格を低下させて、トータルの販売金額を最大化させる方法を採用している。
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