「有機農産物」流通の実態把握のため、センター型産直と協同組合型産直を行っている生産者組織を対象にして、機関調査と農家調査を行った。調査対象は前者が(農)房総食糧センター、(農)船橋農産物供給センター、(農)埼玉産直センター、後者は大分県下郷農協、和歌山県紀ノ川農協である。その結果、次のようなことが明らかになった。 1、生産者組織の価格決定方式は(1)生産費保障方式、(2)市場価格スライド方式、(3)両者の併用方式の3つに類型化できる。近年、前2者の方式の長所を生かし短所を補う次善の方式として併用方式が定着しつつある。 2、価格形定方式が生産費保障方式で統一できない大きな理由は、理念としては生産費保障方式を希求していても、価格形成のベースとなる生産費に関するデータの不足、資料収集の難しさ、家族労働費や中間生産物の評価の難しさを反映しているためである。 3、生産費保障方式で統一できない今一つの理由は、現下の「有機農産物」流通が完全な閉鎖市場ではなく、需給調整のために開放的市場を部分的に導入した半開放的市場形態であるからである。 4、「有機農産物」の需給調整のために流通の広域化が進展しているが、同時に「一物多価」も発生し、価格形成の基準も不明確となっている。つまり、流通「合理化」の方策を弄することによって、有機農業運動や産直の理念と運動論的側面はしだいに希薄化する恐れもある。 5、「有機農産物」の価格形成分析のためには、単純な生産価格論ではなく物流労働や売買労働を含む商業価格論によるアプローチと対象をより限定した方法論が必要がある。しかし、今回の調査研究ではデータ収集が十分に行えず、今後この分野の調査研究が残されている。
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