この研究で植生変化による地域気候に影響する3段階の研究を行った。すなわち、1.植生変化に伴う地域的な土地利用変化の検出、2.植生変化に伴う地域的な地表面温度の変化予測式、3.植生変化に伴う表面温度による気温の推定である。 人間活動のため植生が変化して地域的な気候へ影響をおよぼすためには、土地利用変化が生じる。そのためまず「土地利用変化の検出」について研究を行った。この研究の概略は、衛星データを使用して地域区分を行い、その地域区分について植生指数と地表面温度および両者の回帰係数などによる土地利用変化の検出を試みた。その結果、植生指数と地表面温度の異常値を除いた補正回帰係数が「土地利用変化の検出」に最適であることが判明した。 次に、植生が変化して土地利用が変化すると表面温度が変化し、次に気候が変化するため、植生変化に伴う地域的な地表面温度の変化予測の研究を行った。すなわち、衛星データを使用して、1.と同様に地域区分を行い、この地域区分ごとに土地利用分類と地表面温度に関係を調べ、土地利用分類割合と地表面温度の関係式を導いた。この式は「植生変化に伴う地域的な地表面温度の変化予測式」となる。 さらに、植生変化が気候要素の気温へ影響することを予測するためには、表面温度と気温の関係を調べる必要がある。そのため、表面温度と気温の関係を地上の実測で行った。まず、表面温度と気温の違いを調べ、次いで、表面温度による気温の推定式の解析、気候値を推定するための日平均温度の推定式の解析を行った。これらの結果、明らかになったことは、日平均表面温度から日平均気温を推定する場合月別に回帰式を計算する必要がある。月別の回帰式で約1.0℃以内の標準偏差で推定できる。時間データから日平均気温を推定する場合、06時と18時頃の表面温度からの推定が最も精度がよい。
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