肥満(脂肪の過剰蓄積)は人間と家畜に共通する代謝障害である。鶏の脂肪蓄積は脂肪組織のリポプロテインリパーゼ(LPLase)によって調節されている。本研究ではLPLaseの精製を行って種特異性を明らかにし、さらにLPLaseとアポプロテインのモノクロナル抗体を作成して、抗体投与による脂肪蓄積制御法を開発することを目的とし、次の結果を得た。 (1) LPLaseによるリポプロテイン分解は、ラットではTriton WR-1339により強く阻害されるのに対し、鶏ではその阻害効果が小さい。したがって鶏リポプロテインとLPLaseはラットとは異なった種特異性がある。 (2) LPLaseの失活防止剤として30% Glycerolを用い、Heparin-Sepharose 4B、ハイドロキシアパタイト、Con A-Sepharose 4Bを用いた精製操作を行って、高い比活性を持つLPLaseの精製に成功した。 (3)鶏精製LPLaseとKmとVm、そしてTriton WR-1339に対する阻害様式はラットLPLaseとは異なり、鶏LPLaseは酵素化学的にラットLPLaseとは異なった特性を持つことが示された。 (4) LPLase制御因子としてのApo C-IIに着目し、限外濾過とMono Qを組み合わせたカラム操作により、鶏Apo C-IIの単離精製に初めて成功した。また、鶏Apo C-IIはラットApo C-IIに比べてLPLase活性化作用が大きいことが明らかになった。 (5)単離精製したLPLaseをマウスに免疫感作し、さらにハイブリドーマを作成して鶏LPLase抗体を産生する細胞を24株クローニングした。その内の3株の抗体はLPLaseによるリポプロテイン分解を25%以下に阻害した。 (6)以上、鶏LPLaseには種特異性が存在し、LPLaseのモノクロナル抗体の投与により脂肪蓄積の制御が可能であることを提示した。
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