研究概要 |
ルーメンプロトゾアの遺伝子解析は未踏で、予期せぬ諸問題発生のため、研究計画は大幅に遅れたが、結果は、確実に遺伝子解析まで到達し、Entodinium caudatumのリジン合成酵素遺伝子(lysA)の塩基配列を部分的ながら世界で初めて決めた。この成果は、今後の同プロトゾアの遺伝子解析の基礎となるもので、きわめて意義深いと考える。まず、初年度の最初に問題になった点はmRNA作成時のプロトゾアの由来である。アノトバイオート培養由来のものはmRNA量が少な過ぎて、cDNAの作成には使えなかった。完全無虫山羊のルーメンに同プロトゾアのみを接種したモノフォーネート山羊からのものはmRNA量が多量であった。cDNAライブラリー作成後は、まず、リジン要求E.coli変異株によりスクリーニングを行った。その結果、一度は、計画通りに進み、スクリーニングができたかに思えたが、途中で変異株が明確な反応を示さなくなり、時間的なこともあり、再検討すべき懸案とした。また、一般的なプロトゾア(繊毛虫)は、終止コドンの使い方が他の生物と異なることもあり、ルーメンプロトゾア(繊毛虫)がその例外とは必ずしも言えないので、当初計画のホモロガスプローブ法でも試した。すなわち、E.coli,Corynebacterium glutamicumなどの細菌間でホモロジーの高いlysAジーンの塩基配列部分を合成し、これをディゴキシゲニンでラベルしてプローブとした。その配列は、5'TTAAATCTTGGAGGCGGATTC3'である。これによりcDNAライブラリーからポジティブプラークを検出できた。このクローンをプラスミドに変換し、チェーンターミネーター法により塩基配列を決定中である。これまでに、ルーメン繊毛虫は、他と違い(Euplotesと同様)、終止コドンとしてTAAを使っていることが分かった。また、Euplotesでは、TGAがシステインを認識するが、E.caudatumでは、ユニバーサルなTGCがシステインを認識していると考えられた。
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