研究概要 |
ウシ小型ピロプラズム原虫(Theileria Sergenti)の主要表在抗原である分子量32KDaタンパク質(p32)の遺伝子をクローニングした。p32遺伝子の塩基配列の解析から、持続感染している同一感染牛個体から得た原虫のp32遺伝子は、制限酵素(PstI)切断断片の違いから少なくとも3タイプに分けられ、アミノ酸置換(TypeI/II:Ala^<196>,III:Gly^<196>)も認められた。1アミノ酸置換がp32の2次構造の変化をもたらすことが、コンピューター解析から予測された。さらにバキュロウイルス系で昆虫細胞に発現させた場合、Ala^<196>,Gly^<196>では糖鎖付加に違いがあることが判明した。ダニのスポロゾイトならびに感染赤血球(ピロプラズム)で実験感染させた牛から得た原虫についてp32に対するいくつかのモノクローナル抗体との反応性をみると、ダニで感染した牛では持続感染中にあるモノクローナル抗体(c9)に対する反応性が失われていた。いっぽう、感染赤血球で実験感染させた牛では、モノクローナル抗体との反応性に変化が認められてなかった。この事はダニ体内で有性生殖をする間に多型性を獲得しているものと考えられる。さらに、p32アミノ酸配列をもとに2種類の合成ペプチドを作製、ウサギに免疫し抗体を得た。これらの抗体は原虫のp32とウエスタンブロットで反応することからB cellエピトープを含むことが明らかとなった。さらにこれら抗体は未固定の精製虫体を凝集させることから、これらの部位がp32分子の表面に露出していることも明らかにできた。
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