研究概要 |
既にクローニングしたカニクイザルCD4遺伝子については全塩基配列を決定し、ヒトCD4分子との異同を明らかにし、HeLa,CV-1細胞等の哺乳類細胞での構成的発現を認めた。これらの形質転換細胞の由来がヒト細胞ならば発現するCD4分子はヒト型でもサル型でも感染性クローンHIV-1_<NL432>の感染成立に至る新知見が得られた。一方サル細胞CV-1ではヒトCD4分子を発現してもHIV-1の感染が成立しなかった。HIV-1およびSIVのサルCD4分子上の結合部位を特定するため、ヒトとサルCD4遺伝子間で保存されている制限酵素部位を用いてキメラCD4遺伝子を作製し、ヒト株化細胞HeLaに発現しHIV-1はVIとV4Domainが同種ならばPCR法によりProvirusの組み込みをみとめ感染が成立した。さらに詳細に結合部位を特定するためサルCD4分子の各DomainごとのBaculovirus昆虫細胞系での発現を試みている。 カニクイザルCD4遺伝子を用いたHIV-1感染系の解析では、HIV-1の結合部位と想定されているCD4のV1DomainのCDR-1および-2領域近傍でアミノ酸の相違があるサルCD4分子でも,ヒト株化細胞に発現するとHIV-1の感染が成立し、サル細胞にヒトCD4分子を発現してもHIV-1が感染しないことから、ヒト株化細胞HeLaにCD4分子とは別種のCofactorがありHIV-1感染成立に必要であることが示唆され当初の目的以上に新たな知見が得られた。一方、カニクイザル以外のマカク属サルのCD4遺伝子クローニングについては末梢血由来のリンパ球からのmRNAを鋳型にしたRT-PCR法では特異バンドが得られないことから、CD4遺伝子の頻度が低いものと考えられたので、胸腺細胞等のCD4陽性リンパ球の豊富な出発材料からmRNAを分離が必要であると考えられた。
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