ピロプラズマ感染動物における、原虫非寄生赤血球崩壊の機序を解明するために、本年度は以下の実験を実施した。 (方法)Babesia gibsoni感染動物(イヌ)から採血し、Percoll比重遠心法により原虫非寄生赤血球を分離した。分離赤血球をPBSで洗浄後、酸化還元能(メトヘモグロビン及び還元型グルタチオン)の測定ならびに赤血球膜の分析(脂質及び膜蛋白の分析)を行った。さらに、赤血球と血小板の相互作用を検討するために、感染動物(イヌ)血小板の凝集能を、自動血小板凝集能測定装置(PAM-6C)を使用して測定した。 (成績)1.原虫非寄生赤血球の酸化還元能を検討したところ、メトヘモグロビン濃度は原虫寄生率の上昇によって増加がみられた。しかし、GSH量には変化がみられなかった。 2.感染犬の原虫非寄生赤血球は、非感染犬赤血球よりも高い膜脂質量(コレステロール及びリン脂質)を示した。リン脂質構成成分は変化がみられなかった。膜蛋白分析では、感染犬の原虫非寄生赤血球膜蛋白のうち、バンド4.1aが非感染犬よりも減少していた。 3.B.gibsoni感染血液を培養後の培養上清を用いて、ADP刺激による血小板凝集反応を行ったところ、血小板凝集の亢進がみられた。 以上の成績から、ピロプラズマ感染動物では原虫非寄生赤血球にも障害が生じていること、及び血小板凝集促進物質が産生されている可能性が強く示唆された。
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