研究概要 |
前年度の実験成績から、ピロプラズマ感染動物では原虫非寄生赤血球にも障害が生じていること、及び血小板凝集促進物質が産生されている可能性が示唆された。これらの成績はピロプラズマ症の病態に深く関与していると考えられたため、本年度はさらに以下の実験を行った。 1.Babesia gibsoniの体外培養に伴う原虫非寄生赤血球の変化 B.gibsoni増殖に伴う赤血球の酸化障害について、特に原虫非寄生赤血球を中心に検討した。その結果、以下の成績を得た。すなわち、B.gibsoniの体外培養において原虫増殖が高度(赤血球寄生率27%)であった場合に培養赤血球のメトヘモグロビン(metHb)濃度及び過酸化脂質濃度の著しい増加が見られた。しかし原虫増殖が低度(寄生率0.1%)であった培養ではそれらの増加はみられなかった。 2.原虫非寄生赤血球の酸化障害に対する感受性 B.gibsoni感染前、感染初期(原虫寄生率0.1%)及び感染極期(同27%)の各時期の感染犬赤血球に酸化剤を作用させたところ、感染初期において、感染前よりも多量のmetHbが産生された。 3.脾腫の発生に関与する血小板凝集能の検討 B.gibsoni培養上清によるイヌ血小板のADP凝集試験を行った。その結果、同培養上清中にはADPによるイヌ血小板凝集を促進する因子が出現すること、また同因子は分子量30,000以上の蛋白質であることが判明した。15EA08:以上の成績から、ピロプラズマ原虫であるB.gibsoniの感染により被感染動物では原虫非寄生赤血球にも酸化障害が生じていることが示された。さらに同原虫の増殖により血小板凝集促進因子が産生されることが明らかとなった。これらの現象がピロプラズマ症の病態、特に貧血発生に大きく関与していることが推察された。
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