犬を用いた自己免疫性疾患発生メカニズム解明へのアプローチ

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454126
• 研究機関: 麻布大学
• 研究代表者: 山田 隆紹 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (20126460)
• 研究分担者: 土屋 亮 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30188586)
• キーワード: 自己免疫疾患 / 犬 / T-細胞 / 表面抗原 / モノクローナル抗体

研究概要

今年度は、当研究室で作製した犬リンパ球表面抗原に対するモノクローナル抗体(Mab)7F1(CD5 1ike)、6H6(CD4 like)、8C12(CD8 1ike)を用いて、正常犬ならびに症例犬の末梢血中のリンパ球サブセットの分布状況について検討を行った。また、一部の個体については消化官に於けるこれらの細胞の分布についても把握を試みた。さらに成長期の子犬に於けるこれらの細胞の推移、サイトカイン(猫ricombinant IL-2)を投与した場合の変化についても検討した。これにより次のことが明らかになった。
1)症例犬の末梢血では、免疫学的要因によると考えられる糖尿病の場合、CD5陽性細胞:91.6%、CD4陽性細胞:82.8%、CD8陽性細胞:35.3%であり、正常に比較してヘルパーならびにサプレッサー・サイトトキシテ-系の細胞が増加する傾向が認められた。これに対して、免疫調節機構の障害によると考えられる慢性炎症性の腸炎の症例では、CD5陽性細胞:56.2%、CD4陽性細胞:40.1%、CD8陽性細胞:23.4%とサプレッサー・サイトトキシテ-系細胞の増加傾向が認められた。
2)慢性炎症性の腸炎の症例について、小腸パイル板に分布するリンパ球のサブセットの分析では、サイトトキシテ-系細胞の比率が増加していた。
3)成長期子犬の末梢血リンパ球サブセットの推移(5ケ月齢まで)は、CD5陽性細胞は2.5〜4ケ月齢で最も占める割合が多く、CD4陽性細胞は1ケ月齢では低値を示すが2.5〜3ケ月齢で高値を示す傾向があり、CD8陽性細胞は一定の傾向を認めなかった。
4)rIL-2投与犬に於ける末梢血リンパ球サブセットの推移では、CD4陽性細胞の増加傾向を認め、ヘルパー活性を増加させる可能性が示唆された。
以上の結果は症例数、実験例数共に少ないため、今後データの蓄積がさらに必要と考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Yamada, T., Matsuda, M., Ashida, Y., Tsuchiya. R., et al.: "Isolation of secretory IgA from feline bile and bile IgA levels in growing cats." J. Vet. Med. Sci.54. 717-721 (1992)
• [文献書誌] Tsuchiya, R., Fujise, H., Nishizono, K., Ashida, Y., et al.: "A assay of ornithine carbamoyl transferase activity: Modification for application to bovine serum." J. Vet. Med. Sci.56. 21-26 (1994)
• [文献書誌] Yamada, T., Kakinoki, M., Totsuka, K., Ashida, Y., et al.: "Purification of canine alpha-fetoprotein and alpha-fetoprotein values in dogs." Vet. Immunol. Immunopathol.47. 25-33 (1995)
• [文献書誌] Kato, H., Momoi, Y., Omori, K.,Youn, H-Y., Yamada, T. et al.: "Gammopathy with two M-components in a dog with IgA-type multiple myeloma." Vet. Immunol. Immunopathol.49. 161-168 (1995)