申請者は、イネ萎縮ウイルス(RDV)の多数の系統を持っており、これらの系統は分節ゲノムの電気泳動移動度で区別できる。本研究では、まず一つの系統(ヘルパー)に感染した培養細胞に他の系統の特定の分節ゲノムを導入し、ヘルパーのRNAポリメラーゼと複製機構を利用して導入ゲノムを複製させる方法を確立する。このために、平成5年度は、系統の中から、導入する分節ゲノムを、ヘルパーの対応する分節ゲノムと、電気泳動法で区別できるものを選び、さらにそのcDNAを合成した。 1)RDV北大株の分節ゲノム10番(RDV-H S10)系統がRDV-AI1系統のS10と電気泳動的に区別出来ることがわかった。 2)導入する分節ゲノムより全長のcDNAを作成し、プラスミドベクターのT7転写プロモーターの下流にプラス鎖、SP6プロモーターの下流にマイナス鎖を挿入し、試験管内で大量のRDV-H S10が一本鎖でも、二本鎖でも合成できるようにした。以上より、培養細胞で特定の分節ゲノムの複製がヘルパーウイルスの存在下で検定出来るようになった。 また、他の植物レオウイルスの媒介昆虫である、トビイロウンカやヒメトビウンカの細胞培養にも成功した。
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