研究概要 |
イネ萎縮ウイルスのRNAポリメラーゼの複合体の分離を試みた。純化ウイルスを高濃度の塩化マグネシウムで処理した後、塩化セシウム平衡密度勾配遠心にかけると、P8外被蛋白質が解離して、コア粒子が分離された。この粒子は主にP1,P3,P7蛋白とゲノムRNAで構成されていた。またコア粒子はRNAポリメラーゼ活性を有していた。コア粒子をさらにトリフルオロ酢酸セシウム平衡密度勾配遠心にかけたところ、コア粒子からP1とP7およびゲノムRNAが解離して、P3を主成分とする中空粒子が得られた。P7は中空粒子より重い密度で分離されたので、ゲノムRNAと複合体を形成していると予想した。そこで、P7の核酸結合能をノースウエスターンブロッチング法で解析した。イネ萎縮ウイルスゲノムRNAをプローブとすると、ウイルス構造蛋白質のうちP7のみに結合した。以上の結果からP7がRNAポリメラーゼを有する複合体で二次的に重要な役割を果たしていると予想した。 ヒメトビウンカの培養に成功した。ツマグロヨコバイの場合と同じ培養液で61回-73回継代して五つの培養細胞株を確立した。細胞はヨコバイ類に較べると約半分の大きさで、容器の底面に付着して生育し、その速度は遅くかった。この細胞にイネ黒条萎縮ウイルスを接種したところ、蛍光抗体間接法染色でウイルスの感染を確認できた。植物ウイルスの研究にウンカの培養細胞が用いられたのは、この実験が初めてである。
|