これは2年間連続研究であり、初年度の平成5年度は中間報告となる。 1.骨吸収、骨形成の主役である破骨細胞と骨芽細胞の機能形態を初めて走査電子顕微鏡で立体的に観察できた。 1)破骨細胞が骨に接して骨吸収を行なう波状縁は、指状突起・板状突起の集合であり、これらの密度、配列、集合部の膨隆の状態は、細胞の機能を反映してみえた(論文投稿中)。 2)骨芽細胞は、骨表面に上皮細胞のように互いに接して配列し、骨表面にそってきわめて多数の長い突起を出していることを初めて知った。この突起は骨表面の膠原線維の走行と一致し、骨芽細胞はこの突起により骨基質の膠原線維の配列を決定し、骨層板形成に関与することを示す。(論文準備中) 2.破骨細胞のマーカーとなる酒石酸耐性酸性フォスファターゼを染色すると、この酵素を含む単核細胞が骨表面破骨細胞近くの骨髄に出現することを知った。破骨細胞前駆細胞の分化、由来、移動について考える新所見となった。(論文準備中) 3.骨に種々のセラミック移植し、テトラサイクリン投与により新生骨出現を蛍光顕微鏡(この科学研究費による設備備品)で観察すると、新生骨はセラミックに密着してつくられることを知った。(論文準備中) 4.骨形成を刺激するエストロゲンの投与、骨形成を阻害する非荷重実験により、骨吸収・骨形成の一連の変化に新たな知見を得た。(学会発表) 5.ヒト骨病理標本をとくに腫瘍と関連して観察し、病的骨吸収と病的骨形成について新たな知見を得た。(骨病理セミナーで発表) 6.以上のように多くの知見を得て多くの学会で発表してきたが、次年度はこれを論文発表とし、さらにこの研究を進展させる。
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