研究課題/領域番号 |
05454138
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生理学一般
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
福田 康一郎 千葉大学, 医学部, 教授 (10009649)
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研究分担者 |
林 文明 千葉大学, 医学部, 講師 (80173029)
河原 克雅 千葉大学, 医学部, 助教授 (70134525)
千葉 胤道 千葉大学, 医学部, 教授 (20009525)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 延髄腹側表層 / 呼吸リズム / 横隔神経活動 / 舌咽神経活動 / 肺迷走神経求心路 / 運動ニューロン同定 / ラット |
研究概要 |
呼吸に関する化学感受性機構の少なくとも一部は延髄腹側表層に存在するとされている。本研究ではこの延髄腹側表層の神経組織が、呼吸リズムの発生・制御にどのような役割を演じるかを検討した。麻酔ラットの延髄腹側表層に存在するNucl parapyramidalis superficialis部を両側性に冷却し、横隔神経と舌咽神経(茎突咽頭筋枝)の吸息性活動に及ぼす影響を解析した。舌咽神経の吸息性活動は横隔神経活動に比べて、種々の呼吸抑制因子によって抑制されにくく呼吸中枢活動を知るための重要な指標である。舌咽神経(茎突咽頭筋枝)の運動ニューロン分布部位についても神経組織学的に検索した。また、この実験の基本条件としての麻酔下動物の生体内酸素状態管理に必要な測定技術および評価法を開発した。 延髄腹側表層に26-24℃に冷却すると、横隔神経活動は低下消失したが、舌咽神経の吸息性活動は残存した。20-22℃に冷却すると舌咽神経活動も消失し、呼吸リズム発生は停止したと判断された。冷却からの回復時には、先ず、舌咽神経に吸息性活動が出現し、横隔神経活動の回復は遅延した。これらは迷走神経切断・人工呼吸下に得られたが、迷走神経を切断せずに人工呼吸した場合にも全く同様の結果が得られた。また、肺の進展による吸息抑制反射効果も横隔神経より舌咽神経で弱いことも判明した。 茎突咽頭筋にHRPまたはcholera toxin B-subunit-HRPを注入し、運動ニューロンの延髄内分布を組織学的に検索したところ、疑核の最頭側、顔面神経核の後内側に位置していた。この部位は呼吸リズム発生機構が存在するとされているBotzinger complex,pre-Botzinger complexに近接していた。 以上より、呼吸リズムの発生に延髄腹側表層からのdrivesが不可欠であると考えられる。このdrivesが延髄腹側表層の化学感受性組織のみに由来するか、あるいは化学感受性とは関連しないものかについてはさらに検討する必要がある。また、横隔神経活動の停止が必ずしも延髄内における呼吸リズム発生の停止を意味しないことも判明した。従来より、上気道筋支配の脳神経運動ニューロンの呼吸性活動は麻酔などの呼吸抑制因子によって抑制されやすいことが報告されてきた。しかし、舌咽神経茎突咽頭筋枝の運動ニューロンについては、このニューロン自体の特性、または、呼吸リズム形成機構との神経回路が特異な性質をもつと考えられ、呼吸中枢活動を現す重要なニューロン群と考えられ、今後舌咽神経茎突咽頭筋枝の運動ニューロンの形態的・機能的特性を検討しなければならない。
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