研究概要 |
体熱平衡状態における発汗の動揺を、いくつかの異なる周波数レベルの合成波として捉え、次の方法で周波数分析した。室温36℃、湿度40%の人工気候室内で半裸体の被験者に安静椅座位をとらせ、ほぼ定常状態になった後、90〜120分間前腕、手掌の発汗量、前腕、指尖の皮膚血流量、僥骨動脈血流量、深部温(鼓膜温、食道温)、皮膚温(4カ所)を連続記録した。上記の各測定項目の中、前腕発汗量について、スペクトル分析システム(諏訪トラスト製MEMCALC)を用いて、最大エントロピー法により周波数分析した。発汗量の動揺は周波数0.001〜0.01Hzまでの低頻度領域では1/f、それ以上の高頻度領域では1/f^2または1/f^3のゆらぎを認めた。0.001〜0.01Hzの周波数領域について、パワースペクトル密度を調べたところ、ピーク周波数の偏差の大小に著しい個人差が認められた。最も偏差の小さい例では、0.002,0.005,0.008Hz(周期約8,3,3分)に明らかなピークを認めたが、最も偏差の大きい例ではピークを群別することすら困難であった。その特性には時間的な経過により、いくらか変動すること、また同一実験の反復により、特性の再現性がかなり高いことが認められた。周波数特性の特徴的な少数例の被験者につき、環境温度条件を40℃、40%に変えて暑熱負荷度の影響を、また同一被験者に夏、冬同一条件で記録し、季節差を検討し、それらに明らかな再を認めた。発汗量以外の各パラメータについても分析中である。今後の課題として、それらパラメータの分析結果より個人差の分類とその生理学的な意味の検討を試みたい。
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