血圧制御に重要な役割を果たす交感神経系による血管平滑筋のコントロール機構を研究して、従来の概念を更新する結果を得た。本研究では、ラット尾動脈血管組織を用い血管周囲の交感神経ネットワークを電気刺激した時の平滑筋細胞内Ca^<2+>応答を、レーザー共焦点倒立顕微鏡を使って高い空間分解能と十分な時間分解能で観測することに初めて成功した。この結果、一定強度の交感神経刺激に伴って、従来の概念のようにすべての平滑筋細胞が一様に反応するのではなく、個々の平滑筋細胞でCa^<2+>濃度が周期的に上下するという意外な事実が明かになった。この周期的Ca^<2+>濃度上昇(Ca^<2+>オシレーション)は、細胞によって異なった時相で起こるので、多数の細胞の平均をみるこれまでの研究では一定強度の反応としてしか観測されていなかった。細胞内Ca^<2+>濃度上昇を更に詳しく観測すると、個々のCa^<2+>オシレーションは細胞内20μm/s程のスピードで伝播する、細胞内Ca^<2+>放出に依存したCa^<2+>ウエーブであることも明かになった。このように本研究は、細胞内Ca^<2+>ストアが動脈の収縮制御機構に極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、本研究の成果はCa^<2+>オシレーションが細胞機能制御に深く関与することを明確に示しており、生物学全般に対しても大きなインパクトを与えるものである。
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