研究概要 |
脳におけるバソプレシン(AVP)の受容体の存在が明らかになり,また最近,AVPのV1およびV2受容体に選択性の高い非ペプチド性拮抗薬(V1拮抗薬のOPC-2268,V2拮抗薬のOPC-31260)が開発された. 平成5年度はAVP受容体の性質とその生理的役割を検討し,つぎの成績を得た. 1.海馬AVP受容体の性質と副腎皮質ホルモンの影響 ラット海馬の膜標品を用いた^3H-AVP結合実験と上記の非ペプチド性拮抗薬による結合阻害実験,およびAVP刺激によるイノシトール・三リン酸蓄積作用の結果から,海馬のAVP受容体はV1受容体に属することが明かとなった.さらに,両側副腎摘出ラットと,その条件下で副腎皮質ホルモンを慢性投与したラットについて、AVP受容体の変動を調べた結果,海馬の受容体は副腎皮質ホルモン,特に鉱質コルチコイド(アルドステロン)の影響を受けていることが分かった(Brain Res.,1994). 2.タキキニン・ペプチド-AVP系の体液調節機構 ラット脳室内にタキキニンNK-3受容体作動薬のセンクタイド(0.01〜10nmol)を微量注入すると,容量に依存して抗利尿作用を発現した.この抗利尿作用は,V2受容体拮抗薬(OPC-31260,10mg/kgの静注前処置により抑制された. 以上の結果から,中枢における体液調節機構に,タキキニン・ペプチド-AVP系が存在関与し,昇圧作用と共に(Regul.Pept.1993),抗利尿作用を発現することを示唆した(Neurosci.Lett.1993).
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