研究概要 |
1.脳におけるAVP受容体サブタイプとその性質 脳におけるバソプレシン(AVP)の受容体の存在が明らかになり,また最近,AVPのV_1およびV_2受容体に選択性の高い非ペプチド性拮抗薬(V_1拮抗薬のOPC-21268,V_2拮抗薬のOPC-31260)が開発された.そこで,放射ラベルの^3H-AVPをリガンドに用いて結合実験を行なった.その結果,^3H-AVP結合は海馬および孤束核ともに,非ペプチド性のV_1受容体拮抗薬で強く阻害され,V_2拮抗薬での阻害は弱かった.しかしながら,中枢作用の強いAVPフラグメントのAVP_<4-9>は^3H-AVP結合に対してなんら阻害効果を示さなかった. 次に末梢組織のAVP受容体のcDNAの塩基配列をもとに作成されたAVPのV_<1a>およびV_2受容体のプローブを用いて,中枢AVP受容体の発現をReverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR法)によって検討した.その結果,興味深いことに,海馬や孤束核において,V_2受容体mRNAの発現が確認された.しかし,V_<1a>受容体mRNAの発現は認められず,結合実験の成績との間に矛盾が生じた.この点は今後の研究課題である.現時点での考察として,脳におけるAVP受容体は末梢のV_<1a>受容体とそのシークエンスの一部が異なる新規V_1サブタイプである可能性が考えられる. 2.海馬AVP受容体と副腎皮質ホルモンの影響 両側副腎摘出ラットと,その条件下で副腎皮質ホルモンを慢性投与したラットについて,AVP受容体の変動を調べた結果,海馬の受容体は副腎皮質ホルモン,特に鉱質コルチコイド(アルドステロン)の影響を受けていることが分かった. 3.タキキニン・ペプチド-AVP系の体液調節機構 ラット脳室内にタキキニンNK-3受容体作動薬のセンクタイドを微量注入すると,容量に依存して抗利尿作用を発現した.この作用は,V_2受容体拮抗薬(OPC-31260,10mg/kg)の静注前処理により抑制された.作用部位を同定した結果,視床下部の室傍核のNK-3受容体を介して下垂体からバソプレシンを遊離し,抗利尿作用が発現していることが明らかとなった.
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