研究概要 |
ホスファチジルコリンはイノシトールリン脂質とともにシグナル伝達、細胞増殖に深くかかわっている。今年度は細胞増殖におけるホスファチジルコリン代謝の役割を解明するため酵素の精製と性状の解析、cDNAクローニングを行なった。 1.増殖シグナル経路において中心的な役割を果たすとされるホスホリパーゼDをブタ肺ミクロソームから可溶化し、カラムクロマトグラフィーの組み合わせにより2,200倍精製し、分子量190,000の均一な酵素標品を得ることに成功した。 2.リゾホスホリパーゼをラット肝臓、およびブタ胃粘膜から均一にまで精製し、前者からは24kd、60kd、後者からは22kd、23kdのそれぞれ2つのアイソザイムを得ることができた。肝臓60kd酵素は水解活性のほかにアシル基転移活性を有していた。いずれの酵素もホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸により阻害を受けることが判明し、リゾホスホリパーゼがシグナル伝達に関係していることが示された。肝臓の24kd酵素、胃粘膜の22kd、23kd酵素については抗体を得ることができた。ウエスタン分析により、肝24kd酵素と胃22kd酵素は免疫学的に交叉するが、肝60kd、胃23kdは免疫学的に区別できることが判明した。肝臓24kd酵素については抗体を用いてλgt11ライブラリーからcDNAクローニングを行い。塩基配列を決定した。精製酵素の部分アミノ酸配列を2ヶ所決定したところ、それらはcDNAの塩基配列によく対応し、得られたcDNAクローニングをコードするものであることが証明された。
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