研究概要 |
カドヘリン機能を制御すると考えられているカテニンαに焦点を絞り解析した。カテニンαは、我々の鶏胎児繊維芽細胞をラウス肉腫ウイルスで癌化した系では、強くチロシンリン酸化を受けると共に、N-カドヘリン依存性の細胞凝集能が強く抑制される。一方E-カドヘリンを発現しているラット3Y1細胞では、カテニンαのリン酸化も、細胞間凝集能の抑制も共に著明ではない。今までの研究からでは、これらの相違がE-,N-カドヘリンの違いによるものか、αカテニンの構造の違いによるものか明かでなかった。そこで実験を行ない以下の点が明らかになった。 1)カドヘリンの機能を制御すると考えられているカテニンαの遺伝子を、鶏cDNAライブラリーからクローニングし、ほぼ全長の遺伝子構造を決定した。その結果、鶏繊維芽細胞のNカドヘリンに結合するカテニンは、鶏の神経細胞のNカドヘリンに結合するNカテニンよりむしろ、マウスのEカドヘリンに結合するカテニンと相同性を有することが判明した。現在チロシンリン酸化部位を検索中である。 2)ラウス肉腫ウイルスの癌遺伝子src以外のチロシンキナーゼ型癌遺伝子fps,yesで癌化した鶏胎児繊維芽細胞でも、αカテニンのチロシンリン酸化が検出され、このαカテニンは様々の癌遺伝子産物の標的となっていることが明かとなった。
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