研究概要 |
1.ポリ(ADP-リボース)シンテターゼの阻害剤の解析 数年来行ってきている同酵素阻害剤のサーベイを続行し,今年度は特にヘテロサイクリックアミンとフェナントリジノンおよびリン脂質を中心に検討を加えた。その結果,これら天然に存在する物質の中に中等度の強さ(IC_<50>が1μM〜1mMの間)の阻害剤が多数見出された。 2.ポリ(ADP-リボース)シンテターゼ阻害剤による癌細胞の分化誘導 先年予備的に見出したベスナリノンによるテラトカルシノーマEC細胞の分化誘導がベンジル誘導体でより早く,より低濃度で行われることを見出した。また,ヘテロサイクリックアミンの1つで,食品中に最も多く含まれるアミノ酸の熱分解産物PhIPが,既知の物質中最も協力な分化誘導剤の1つであることを見出した。 3.癌細胞の誘導分化過程におけるポリ(ADP-リボース)代謝の解析 テラトカルシノーマEC細胞を非シンテターゼ阻害性誘導物質all-trans-レチノイン酸で分化させる際,ポリ(ADP-リボース)合成が従来考えられていたように単純に低下するのではなく,早期(1日以内)に一過性の亢進を示し,これとともに細胞内NAD濃度が著減することを見出した。この知見は,分化誘導のごく初期にDNAの断片化が関係する可能性を示唆するものと思われる。
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