研究概要 |
カルニチン欠乏jvsマウスの主に肝臓における遺伝子発現異常と心肥大の発症機構,並びに病因遺伝子の同定に関して研究を進めた。 すでに肝臓における転写因子AP-1が肝臓における遺伝子発現に重要な役割を果たしていると考えられる結果を得ていたので,肝癌細胞培養系を用い,グルココルチコイド(G)による尿素サイクル酵素(CPS)の誘導に対するc-jun遺伝子transfectionの効果を検討した。その結果,c-junの発現はGによるCPSの誘導を抑制することを証明した。また初代肝細胞培養系において,長鎖不飽和脂肪酸の添加がGによるCPS等の誘導を阻害することを明らかにした。一方,尿素サイクル酵素であるCPSとASSの遺伝子5'上流の塩基配列を解読し,シスエレメントとして,C/EBP,AP-1,GRE(ハーフサイト)が共通に存在することを明らかにした。今後はこれらのDNAに結合し,転写に影響を与えるような,jvsマウスに特異的な転写因子を検索する。 心肥大については,すでにjvsマウスの心室において明らかにしていたatrial natriuretic peptide(ANP)mRNAの異常な発現上昇もカルニチン投与で抑制されること,左室圧負荷モデルで認められる骨格筋型actinはjvsマウスでも上昇しているが,β-myosin heavy chainの発現は上昇しておらず,圧負荷による心肥大とは異なることを明らかにした。一方jvsマウスの肝臓の潅流実験で,jvsの肝臓は長鎖脂肪酸をケトン体に変換できないが,カルニチンの添加条件下では正常以上のケトン体産生能力をもつことを明らかにした(京都府立医科大学との共同研究)。また動物交配法を用いる染色体マッピングで,jvs遺伝子は染色体11番のD11MiT131(DNAマーカー)の近傍に存在することを示した(金沢大学との共同研究)。
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