研究概要 |
1.抗体によるホメオボックス蛋白の発現の検索。 HOXD4のN末端側のアミノ酸配列に対する抗体を用いて、マウス胚におけるHOXD4蛋白の発現を調べた。抗HOXD4抗体の特異性は、13日齢マウスのホモジネートを用いてイムノブロットで確認した。11日,13日,15日,17日令のマウス胎児のパラフィン包埋標本を作成し、矢状面と横断面のパラフィン切片を抗HOXD4抗体で免疫染色を行なった。[結果](1)皮膚:上1/3の層が染り、下3/4の層は増殖細胞の抗原マーカーであるPCNA陽性であった。特に注目されたのは、抗PCNA抗体では手足の水かき部分が染まらないのに対して、抗HOXD4抗体ではよく染った。(2)軟骨:骨化部に近接した軟骨細胞が染色された。一方、抗PCNA抗体ではその外側の増殖している未熟軟骨細胞が主に染色された。(3)腎臓:腎臓の髄質特に集合管が染色された。 2.培養細胞へのHOXD3(旧名 HOX4A)遺伝子の導入による生物学的変化とその解析。 赤芽球系白血病細胞HEL細胞に動物細胞発現ベクターに組込んだHOXD3遺伝子を導入して過剰発現させた。センストランスフェクタントのE1とE6のクローンはHOXD3 mRNAを7-10倍も過剰発現していていた。一方、アンチセンストランスフェクタントのHOXD3の発現レベルは全て親株HEL細胞とほとんど同じ低レベルであった。このうちC1とC2のクローンをコントロールとして実験に用いた。[結果]E1とE6クローンでは細胞-細胞および細胞-細胞外外基質の接着性が著しく高まった。HOXD3の過剰発現はHEL細胞の増殖速度には影響を及ぼさなかった。RNAブロット解析ではインテグリンβ3のmRNA量が増加していた。FACS解析では、ヒト血小板インテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)複合体(フィブロネクチン・レセプター)がE1とE6クローンで高発現していることが証明された。
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